——-先生のご専門の統合医療。
耳慣れない言葉ですがどんなものなのでしょうか?
従来の西洋医学というのは、すでに病気を持っている方に治療を行うというもの。ですが、昨今増えてきた生活習慣病のように慢性症状を伴う病気に関しては、対症療法中心の西洋医学では対応しきれなくなってきた。
そこで、鍼灸やアロマテラピー、漢方医学やサプリメントなど広い範囲の代替手段を組み合わせて補完をしましょう、というのが統合医療の基本的な考えです。
——-それではすでに病気を持っている人に対応したものなのでしょうか?
それは違います。もちろん、すでに病気を持っている人に、今の治療のプラスαとして補完医療を提案することもありますが、それよりもまだ病気になっていない人たちに予防を促すのが統合医療の一番の目的です。
例えば、日本には現在250万人の糖尿病患者がいますが、その予備軍となると約2,000万人いると言われています。そういう、リスクはあるけれどまだ発病していない方たちを病者にしないために水際で食い止めるには、食事療法であるとか運動であるとか、セルフケアを啓発しなくてはなりません。そのような指導も統合医療の範疇なんですね。東洋医学で言うところの「未病」(健康状態の範囲ではあるがリスクのある状態)をいかに「病者」にしないか。統合医療の目的はこれにつきます。
——-統合医療の今後について教えてください。
大きな被害があった2011年の大震災。特に被害が甚大だった地域は高齢者も多く、透析や投薬など日常的な医療行為が必要だった方がたくさんいました。しかし電気や水、道路などのインフラが寸断された状態では、従来の西洋医学は彼らに何も与えることができなかった。患者さんはもちろん、医療関係者の中にも西洋医学の限界を感じた方は多かったんじゃないでしょうか。さらに、地震や津波への恐怖感、避難所生活の閉塞感など精神的なストレスも多大なものでした。人間、極度のストレスを感じ交感神経が緊張し続けると、体のバランスが崩れて、いつも効く薬が全く効かなくなったりするんです。
心と体はダイレクトにつながってますからね。そこで当時役に立ったのが鍼灸治療や肌と肌を寄り添うようなタッチケアでした。そして被災地では災害派遣された自衛隊員のPTSD発症もあったと聞きます。そのようなメンタルケアも含めて、インフラを必要とせず、心も癒すことができる統合医療の必要性を強く感じました。
いつか来るであろうネクストクライシスに備えて、自分で自分の健康を管理するという大切さを感じた方も多かったでしょう。そういう方を支えるのが、統合医療の役目だと思っています。